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2010年4月27日 (火)

700回の富士登山

 先週の木曜日、新潟へ向かっている車中での事です。いつものように、聴くとはなしに流れているラジオから、興味深い内容の語りが聞こえてきまして、思わず聴き入ってしまいました。

 

 番組はNHKの「ラジオ深夜便」で、ないとエッセーのアンコール放送ということで、神奈川県在住の登山愛好家である佐々木茂良さんを取り上げていました。

 この夜は「私と700回の富士登山~安全に楽しむために」と題されたその4回目という事で、ナンと驚くなかれ、佐々木さんは毎日のように富士山の頂上まで登山を続けているそうで、今までに登った回数は600回を超えるといい、70才を迎える今年中には700回を達成したいとおっしゃってました (^^;

 

 富士山は日本一高い山とはいえ、毎年多くの登山客を集めており、中にはそれほど登山の経験のない方でも登頂に成功しています。
 しかし、だからといって富士登山が口で言うほど簡単なモノでないことは私にも容易に想像がつきます。

 

 佐々木さんは、定年を迎えた後、友人に誘われて64才の時に初めて富士山に登ったそうです。
 以来、富士登山に取り憑かれ、GWの前辺りから11月に入るまで、ほとんど毎日のように富士山に登り続けているという・・・

 

 私は、この話を聞いた時、素直に凄い人がいるもんだと感心しました(笑い)

 

 しかし、その後で直ぐに、この人はなんてムダなことをしているんだろうとも思いました (^^ゞ

 

 山頂に登って特別な「何か」をするわけではありません。ただ、澄んだ空気を吸って、また下りてくるだけだそうです。ジョギングなどのように、登山することが身体のトレーニングというわけでもないようです。第一、身体を鍛えるために登るというのなら、こんな遠くまで車で来なくても、ご近所の運動公園とかジムとか、ふさわしい場所はいくらでもあるように思えます。

 ご自宅のある秦野市から新五合目に在る駐車場まで車で二時間かけて行き、朝の7時頃から登山を始め、頂上までの往復に要する所要時間は5時間弱だそうです。
 そこからまた車で二時間かけて自宅まで戻るという日課ですから、一日のうち10時間近くは富士登山に費やすことになり、午後2時~3時くらいには帰ってくるとはいうものの、もっと他にする事はないのかと思ってしまいます(笑い)

 

 そもそも、仕事でもないのに毎日毎日片道70kmの行程をドライブすること自体、エコロジーとエコノミーに反する行為であり、道楽もここまで来ると行き過ぎなのではないか。
 毎日毎日おおよそ1500円程度のガソリンを消費し、排気ガスをまき散らし、富士山に登ってただ下りてくるだけの徒労とも思えるこの行動に何のメリットがあるのだろうと (^_^ゞポリポリ

 

 まぁ、人それぞれ価値観は違うわけですから、毎日富士山に登ることにも何らかの意義と目的を見いだしているはずで、そうでなければ6年間の間に700回近くも富士山に登るというのはまずあり得ないことです。

 では、その意義と目的とはいったい何なのか・・・

 

 その答えの一つを、2008年11月9日付けの東京新聞の記事で垣間見たような気がしました。

 佐々木さんは、自宅から新五合目の駐車場に向かう途中、コンビニで新聞を買い、それを登山ルートの途中にある二軒の山小屋に届けているんだそうで、いうならば「富士山の新聞配達員」をボランティアで続けているそうです。

 自分の行動が誰かの役に立っているという自負心があるからこそ、毎日富士登山をするモチベーションが保てるのだろうと思います。

 人間は、「自分のため」というモチベーションではなかなか頑張りきれないものですが、「誰かのため」というのが目的だと実力以上の力が発揮できたりするものです。
 この辺の事については、2年ほど前に「誰かのために」という記事の中で語ったことがあります。

 

 しかし、ほとんど毎日のように富士山のてっぺんまで登る気力体力を、70才近い人が持っているということは本当に素晴らしいことだと思います。

 もはや、現代の仙人とか山伏などに近い存在なんじゃないかとさえ思えてなりません。

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