ご冥福
先日、四国に上陸した台風12号は、奈良県や和歌山県などに大きな被害をもたらし、日本海へと通り抜けていった・・・
この台風に関して、某ツイッターで次のようなつぶやきを目にしました。
「台風まだぬけませんね。被害に遭われた方のご冥福をお祈りいたします。」
発言者がよく知っているネッ友さんのお一人であり、ツイッターの場所も限定された方しか目にできない場所ですから、発言の真意はともかくとして、おそらくは言葉を選び間違えただけの、単なるケアレスミスだと思うんですが、掲示板などと違い、チャットやツイッターというのは、文章を推敲しているだけの時間的な余裕がないままに、入力され、発信されていくのが常なので、いつも以上に言葉遣いには慎重になるべきです。
このつぶやきを発信した発言者も、被災地のただならぬ被害状況に心を痛め、お見舞いのつもりで書込んだだけの一文だと思います。
しかし、「お見舞い申し上げます」と言うべきところを、「ご冥福をお祈りいたします」と言ってしまっては、被災地の方に対し、たいへん失礼な発言ということになってしまいます。
「ご冥福を祈る」というのは、亡くなった方に対する哀悼の言葉ですから、先の発言でいえば、「被害に遭われ、お亡くなりになった方のご冥福をお祈りいたします」というのならまだしも、「被害に遭われた方のご冥福を・・・」というのは、明らかな間違いということになります。
なぜなら、被害に遭った方全員が亡くなったわけではないからです。
そういう私自身も、様々な場所でいろいろと発言しては、読み手の心を傷つけてきた過去がありますから、あまり知ったふうなことも言えないのですが、誰が目にするかわからないのがネットの世界ですから、少なくても要らぬ敵を作らないだけの配慮は怠るべきではないと思います。
さらに言うならば、「冥福」ということばは、仏教用語であり、仏教徒以外の信者や無宗教の方に対して用いるのは、厳密に言えば避けるべきだという意見もあります。
私も、外国の方の訃報を伝える際に、「ご冥福を・・・」と述べるのは、おそらくは仏教徒ではない可能性が高いので、避けるべきだと思っています。
また、「冥福」というのは、「冥土」で「幸福」になるという意味があり、「冥土」とは死後の世界のことですから、「冥福を祈る」と口にすることは、「私は死後の世界があることを信じていますよ」という事を、言外に言っているのだという事を忘れてはなりません (^^;
少なくても、天国とか地獄などという死後の世界なんて存在するわけがないと思っている人であれば、「ご冥福を・・・」などと口にすることは、あり得ないことであり、間違いということになります。
そうはいっても、「ご冥福をお祈りします」という言い回しは、ニュースなどで訃報が伝えられる際にもよく用いられる言葉ですから、世間的には「常套句」としてそれほど神経質になる必要もないのかもしれませんが、本来であれば、アナウンサーのような公平性を保たねばならない人が口にするのであれば、「謹んでお悔やみ申し上げます」などというような、どんな宗教の人に対しても無難な言葉を選ぶべきだろうと私は思います。
あるいは、亡くなったという事実だけを伝え、何もコメントは言わないという選択肢もアリではないかと・・・
日本という国は、単一民族国家という事もあって、宗教に対しては、比較的寛容というか、それとも無神経というべきなのか、他人の宗教に配慮して発言をするという事は少ないと思いますが、アメリカのような多民族国家においては、例えば「メリー・クリスマス」という挨拶でさえ、はばかられたりするのが現実です。
近年の米国では、イスラム教徒を始め、他の信者に配慮し、宗教的中立の立場から、「メリー・クリスマス」の代わりに「Happy Holidays(ハッピー・ホリデーズ)」という挨拶を用いる場合があるという事も聞きましたし、公共の場においてはクリスマス・ツリーの飾り付けなんかも行なわないところが増えてきたなんてニュースもあったように記憶しています。
いずれにしても、普段から何げなく使っている「ご冥福をお祈りいたします」ということばですが、ケースによっては避けた方がいい場合もあるということを知っておくのは、決してムダではないように思います (^_^ゞポリポリ
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