奈落
公演中に誤って奈落の底に転落し、大怪我をして入院していた、歌舞伎俳優の市川染五郎が、昨日、退院したと報じられました。
「奈落」なんてことばがあったことを、連日の報道であらためて思い出したんですが、そもそもの意味は、仏教用語で「地獄そのもの」や「そこに落ちること」を指します。
それがなぜ、「舞台などの表舞台の下側」に対して用いられるようになったかといえば、華やかな舞台の上とは違い、舞台の下側は暗い場所であることが多いので、裏方に対する差別的な意味合いもあって、「奈落」と呼ぶようになったのだと思います。
演劇などで、大道具や小道具と呼ばれている裏方さんの多くは、役者として芽のでなかった人も少なくないことから、そういうところで働くようになったら役者もお終いみたいな意識もおそらくはあったのだろうと・・・
それはともかくとして、今回の事故ですが、単なる不注意による事故では済まないように思うのは私だけだろうか・・・
普段は平らなはずの舞台の床が、演出上の都合で下に下がることもあり、しかも、下がって大きな穴が開いた状態であるにも関わらず、その周りでは舞いなどの演技が続けられるというのは、どう考えても危険であり、演出上の大きな「過失」、あるいは「失態」ではないのかと・・・
大きな穴が開いている事がわかっていて、落ちた方が悪いというような考えでは、これから先も同様の事故が無いとは言いきれないし、おそらくは過去にも奈落の底に落ちてしまった役者は何人か居たのではないか・・・
大事に至らなかったのが不幸中の幸いという事で、演出の根本的な改善が必要なのではないかと思う次第です。
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